日本社会では少子高齢化が進み、医療・介護事業の人的需要が年々高まっています。在宅で診察・健康管理・入浴介助などの医療サービスが受けられる訪問看護の利用者が増え、訪問看護ステーションを支える事務職の需要も大きくなりつつあります。
本記事では訪問看護の事務がきつい仕事だと言われる理由、仕事内容と訪問看護施設の種類、事務職のメリット・デメリットを解説します。本記事を読んで、訪問看護の事務職の仕事や職場環境に詳しくなりましょう。
訪問看護の事務はどのようなことをするのでしょうか。
「一般的な医療事務」は病院の受付カウンターに座っており、受付業務・医療事務作業と並行して外来の患者さんと対面で直接やりとりをします。
一方で「訪問看護の事務」は外来がないため、日常的な患者さんとの対面はありません。代わりに電話で患者さんやそのご家族と話す機会が多いです。基本的にオフィスで請求業務や電話対応、書類整理などの事務作業をしますが、訪問スタッフに同行して医療現場で外勤をするケースがあるのも一般的な医療事務との大きな違いです。
では、訪問看護の事務がきついといわれる理由にはどのようなものがあるのでしょうか。主に以下の4点が挙げられます。
● 仕事量が多い
● 人間関係のストレスを感じやすい
● 仕事のプレッシャーが大きい
勤務先によって違いはありますが、一般的に訪問看護事務の仕事量は多めです。事務作業である請求業務・電話対応・書類整理・スケジュール管理に加えて、訪問看護ステーション内の雑務を任されることもあります。また、内勤だけではなく訪問診療に同行して外勤をするケースもあります。訪問看護ステーションによっては、数年おきのルール変更で仕事に必要な知識の覚え直しが必要なケースもあり、勉強も大切な仕事の一部分です。
訪問看護事務は仕事上、医師・看護師・ケアマネージャー・患者さんとそのご家族などさまざまな方とやり取りを行います。患者さんの病状やご家族の看護への関わり方、多忙な医師やケアマネージャーなど相手の状況を理解しながらコミュニケーションを進めるので、人間関係をストレスに感じてきついと感じるケースも少なくありません。
さらに、仕事のプレッシャーが大きいのもきついと感じる理由の一つです。例えば、精神科の訪問看護事務の場合、患者さんの精神疾患の状態を細かく理解した上で電話対応をする必要があります。患者さんが電話の向こうで何を訴えているか分からなくても電話を切らずに柔軟な対応をすることが求められるなどです。患者さんの命に関わるケースもあるので、常に責任感のある対応を求められ、きついと感じてしまう方もいるでしょう。
では「訪問看護の事務」には具体的にはどのような仕事があるのでしょうか。ここでは主な仕事を5つ解説します。
訪問看護事務の主な仕事の一つに、関係各所への請求業務があります。
例えば、毎月行うレセプト(診察報酬明細書)請求業務です。レセプトとは保険者に負担してもらう費用を算出して請求する処理のことで、毎月10日までに前月分を算出し、健康保険組合に明細を提出する必要があります。
医療・健康・介護保険が組み合わさっているケースや指定難病の助成制度、各市町村により異なる支援制度も加味して算出するため、複雑な請求を正しく行える知識が必要になります。
<3>電話対応
電話対応も訪問看護事務の重要な仕事の一つです。
訪問看護ステーションは通常の病院より電話対応が多いです。患者さんやそのご家族と電話でコミュニケーションを取り、ケアマネージャーや相談員など関係各所と円滑な関係を築く重要な役目も担っています。
書類整理も訪問看護事務の大切な仕事の一つです。
近年はデータ化の動きもありますが、訪問看護ステーションによっては紙ベースのやり取りが主な施設もあるでしょう。訪問看護事務は下記のようにさまざまな書類を正確に「仕分け」「送付」「作成」します。
● 仕分け:訪問看護指示書・サービス提供票・計画書報告など
● 送付:訪問看護指示書の依頼・計画書・報告書・請求書など
● 作成:訪問看護契約書・駐車許可証など
訪問看護師や訪問する患者さんのスケジュール管理も訪問看護事務の仕事の一つです。
患者さんから緊急の連絡があった際、命に関わるケースもあります。対応できる看護師を見つけて迅速な医療判断を行うため、日頃から看護師のスケジュール管理をする必要があります。近年はテレワークを導入した訪問看護ステーションも増えてきているため、スケジュールの把握・調整は重要です。
訪問看護では消耗品も多いため、備品の個数管理・発注も訪問看護事務の仕事の一つです。
前述した全ての仕事と並行し、訪問看護ステーションが円滑に回るように備品管理をする必要があります。訪問看護事務が備品管理をしっかり行うことで、組織全体の業務効率の促進に貢献しています。
訪問看護施設にはどのような種類があるのでしょうか。ここでは「訪問看護ステーション」と「介護施設が運営する訪問看護施設」の2つを解説します。
「訪問看護ステーション」は、患者さんを訪問する医療スタッフやケアマネージャー、事務員などで運営をしている訪問看護専門の施設です。公共交通機関や自動車などを利用して患者さんを個別に訪ね、医療業務を行います。
一方で「介護施設が運営する訪問看護施設」は、老人介護施設に併設もしくは隣接した施設にて訪問看護業務を行う施設です。運営元は老人介護施設や同系列の会社の場合が多いです。施設に入所していらっしゃる患者さんを訪問して看護を行うのが大きな違いです。
訪問看護事務のメリット・デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
まず、メリットには以下のポイントが挙げられます。
● 全国どこでも職種を変えずに働くことが可能
● 医療に特化した専門知識やスキルは転職に強い
● 少子高齢化なのでニーズが大きく景気に影響されない
● 一般的な事務職と比べるとやや高給
訪問看護事務職は専門性が高い仕事です。女性が配偶者の転勤などで引っ越す際も仕事を見つけやすく、専門知識・スキルが身に付いていれば転職先も比較的見つけやすいです。少子高齢化が進んでいる今、今後もニーズが増えていく仕事の一つなので、長く続けられる可能性も高いでしょう。また、住んでいる地域や勤務先によって差がありますが、一般的な事務職の平均給与に比べて訪問看護事務職はやや高給なのもメリットの一つです。勤務体系に関わらずパートやアルバイトの時給も高めに設定されていることが多いので、事務の仕事でしっかりと稼ぎたい方にはメリットになります。
一方で、デメリットには前述した仕事量の多さ・人間関係のストレスや仕事上のプレッシャーの大きさなどが挙げられます。しかし「成長できる環境である」「仕事にやりがいを感じる」と感じるケースもありますので、何をデメリットとして捉えるかは自分で判断するようにしましょう。
本記事では訪問看護の事務がきつい仕事と言われる理由、仕事内容と訪問看護施設の種類、事務職のメリット・デメリットを解説しました。
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