訪問看護が認知されている昨今、精神科訪問看護を利用して在宅ケアを望む方が増えています。しかし、患者さんが在宅ケアを望んでいても、「精神科訪問看護指示書」が交付されていないとサービスが受けられないことをご存知ですか。
精神科訪問看護指示書は主治医から交付される正式な文書で、患者さんの持つ病状や疾患により書き方が異なります。他の指示書との違いや、どのようなポイントに気をつけて書けばよいのかが分からず迷う方も少なくないでしょう。
本記事では、訪問看護指示書とその種類5つと、精神科訪問看護指示書に記載すべき必要項目8つを詳しく解説します。本記事を読んで、精神科訪問看護指示書に詳しくなりましょう。
訪問看護指示書とはどのような文書なのでしょうか。
訪問看護指示書は、患者さんの主治医が訪問看護による在宅ケアが必要だと判断すると交付される正式な指示書です。訪問看護サービスは、患者さんの病状や疾患に基づいて介護保険と医療保険のどちらかで利用しますが、どちらの保険法にも主治医による指示を文章で受ける必要性が明記されています。
訪問看護指示書には、患者さんの基本的な情報や治療の状況、これから必要な医療処置の内容などが記載されており、主治医から訪問看護ステーション宛に交付します。
訪問看護で発生する訪問看護指示料とは、具体的に何を指すのでしょうか。
訪問看護指示料は、訪問看護を行うと算定される「医療点数」を指します。主治医が訪問看護ステーション宛に訪問看護指示書を交付すると基本的に毎月1回、300点が加算されます。算定は医師が行い、追加の指示書が交付されるとその都度ポイントが加算されていく仕組みです。
訪問看護指示書には、患者さんの病状に合わせた5つの種類が存在します。ここでは、それぞれの訪問看護指示書の内容を詳しく解説します。
訪問看護指示書は、介護保険・医療保険どちらを適用しても交付できる指示書です。
前述した通り、主治医に限り月に1回交付ができます。訪問看護指示書の指示期間は最長6カ月で、未記載の場合は1カ月となるので注意しましょう。訪問看護指示料は300点です。
特別訪問看護指示書は、訪問看護指示書の交付が前提で追加交付される指示書です。基本的に医療保険が適用となるため、介護保険で訪問看護を利用している患者さんは医療保険による訪問看護に切り替えが必要となります。
また、特別訪問看護指示書は、患者さんの症状の悪化や退院直後などで主治医が「頻繁な訪問看護が必要」と判断すると交付されます。交付は原則として月に1回ですが「気管カニューレを使用している」「褥瘡が真皮を超えている」の条件を患者さんが満たしている場合は例外的に月2回まで交付が可能です。
特別訪問看護指示書が交付されると週4日以上の訪問看護が必要で、指示期間は月を跨ぐ14日間までとされています。訪問看護指示料として100点が加算されます。
在宅患者訪問点滴注射指示書は、介護保険・医療保険どちらの適用でも交付できる指示書です。
患者さんが週3回以上の点滴注射による治療を必要としていると主治医が認めれば交付されます。患者さん1人につき週1回、月に何度でも交付が可能な指示書ですが「中心静脈栄養(IVH)」は対象外となるので注意が必要です。
在宅患者訪問点滴注射指示書の指示期間は7日以内で、訪問看護指示料は60点が加算されます。
精神科訪問看護指示書は、基本的に医療保険が適用される指示書です。
精神科の主治医に限り月に1回交付できる指示書で、精神科訪問看護ステーションが精神科訪問看護基本療養費(I)〜(IV)やその加算を算定すると交付されます。
しかし、精神科訪問看護師が精神に疾患のある患者さんを訪問して訪問看護基本療養費(I)〜(III)とそれに対する加算を算定する場合は、精神科訪問看護指示書ではなく前述した「訪問看護指示書」を交付してもらう必要があります。ややこしい点もあるので、事前に精神科の医師に相談して正しい指示書を交付してもらうようにしましょう。
精神科訪問看護指示書が交付されていれば、通常の訪問看護指示書は必要ありません。指示期間は6カ月までで、訪問看護指示料は300点です。
精神科特別訪問看護指示書は、基本的に医療保険が適用されます。精神科の主治医に限り月に1回交付できる指示書です。
訪問看護は基本的に週1回の訪問ですが、患者さんが服薬の中断などで容体が悪化したと認められる場合に訪問回数を増やすことができます。
指示期間は14日までで、訪問看護指示料100点が加算されます。
精神科訪問看護指示書の必要項目には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
精神科訪問看護指示書に指定された形式はありませんが、記載が必要な項目は決まっています。提出した精神科訪問看護指示書から必要項目の記載が漏れていると差し戻しをされてしまう可能性もあります。差し戻しになると申請から交付までに時間を要し、精神科訪問看護のサービス開始が遅れる原因となるため、必要項目が抜けないようにしましょう。
精神科訪問看護指示書の必要項目の一つは指示期間です。
基本的な精神科訪問看護指示書の指示期間は1~6カ月と決まっています。精神科訪問看護のサービスは指示期間内でしか受けられないため、指示期間を過ぎた場合は新しい指示書の交付が必要です。
精神科訪問看護指示書の必要項目の一つに患者さんの基本情報も挙げられます。
基本情報に含まれるものとして、精神科訪問看護のサービスを受ける患者さんの氏名や住所、生年月日などがあります。訪問看護ステーション内に同姓同名や似た名前の患者さんがいる場合は書き間違える可能性もあるため、個人情報の書き間違えが無いようにしっかりと確認を行いましょう。
主たる傷病名も精神科訪問看護指示書の必要項目の一つです。
患者さんが主に持っている傷病名や精神疾患名を正しく記載しましょう。患者さんにより精神科訪問看護のサービスを介護保険と医療保険のどちらで適用して受けるかが変わったり、自己負担額が変わったりするため、とても大切な項目です。
また、精神科訪問看護指示書で患者さんが「認知症」と診断されている場合は、少しややこしいルールがあるので注意が必要です。
主な疾患が認知症の患者さんは、精神科訪問看護指示書を交付しようとしている主治医が属する医療機関が「精神科在宅患者支援管理料」を算定していれば訪問看護のサービスを受けられます。主治医が属している医療機関が精神科在宅患者支援管理料を算定していなければ精神科訪問看護指示書が無効になり訪問看護サービスが受けられないケースもあるため、事前に確認しておきましょう。
患者さんの症状や現在の状況も、精神科訪問看護指示書の必要項目の一つです。
患者さんの持つ精神疾患の内容や、処方されて日常的に内服している薬の名称などを詳しく記載しましょう。内服している薬が多くて欄に書ききれない際は「別紙参照」と記載して違う用紙にまとめて記載すれば問題ありません。
また、患者さんに病識がなく、自分がどのような状態に置かれているか知らない、もしくは理解できていない場合は「病名告知」の欄に「なし」と記載します。病名告知がなしの患者さんを担当する医療関係者は、事前に患者さんとの関わり方を確認しておく必要があるでしょう。
精神科訪問看護指示書の必要項目の一つに、複数名訪問の必要性も挙げられます。
精神科訪問看護では、1人の患者さんを2名以上で訪問してケアを行うケースも少なくありません。複数名訪問が必要かを判断するには主に以下のような基準があります。
短時間訪問の必要性の有無も、精神科訪問看護指示書の必要項目の一つです。
精神科訪問看護では、基本的な1回当たりの訪問時間は30分以上です。しかし、精神科訪問看護師が30分以上介入すると患者さんの精神状態に影響を及ぼして病状の悪化を招くケースも少なくありません。その場合、短時間訪問の必要「あり」で指示を行いましょう。
患者さんにまつわる留意事項や指示内容も、精神科訪問看護指示書の必要項目の一つです。
精神科訪問看護で注意しておきたいのが「リハビリテーション」の項目です。精神科訪問看護のサービスを受けている患者さんの中には、身体的なリハビリテーションを並行して受けている方もいるでしょう。精神科訪問看護指示書にこの旨が含まれていないと、リハビリデーションを行う専門職員が患者さんを訪問できません。また、令和3年の介護報酬改定では「頻度の記載」も必要になったので注意しておきましょう。
患者さんが持つ精神疾患や症状、リハビリテーションの有無などの情報を細かく記載するようにしましょう。
医療機関名も精神科訪問看護指示書の必要項目の一つです。
医療機関の必要情報に加えて、指示書の原本性を高めるために「捺印」があると望ましいでしょう。精神科訪問看護指示書を記載した日付と医療機関名、担当の主治医名、住所、電話やファックス番号の詳細などを記載します。
本記事では、訪問看護指示書と5つの種類、精神科訪問看護指示書を作成する際の必要項目8つを詳しく解説しました。精神科訪問看護指示書には他の指示書と異なる部分も多くあります。正しい知識を持ち、実務の中で役立てていきましょう。
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