精神科訪問看護師の仕事は、患者さんの自宅を直接訪問して在宅ケアを行います。では、精神的な疾患を持つ患者さんがグループホームに入所している場合、精神科訪問看護のサービスを受けることは可能なのでしょうか。
本記事では、グループホームに入所している患者さんが精神科訪問看護のサービスを利用するために必要な条件と、在宅ケアとの違い、グループホームを訪問する際に気をつけたいポイント3点を詳しく解説します。本記事を読んで、精神科訪問看護師が自宅以外の施設を訪問するための仕組みを理解しましょう。
グループホームに入所している患者さんが精神科訪問看護のサービスを受けるには一定の条件を満たす必要があります。
患者さんの訪問・在宅ケアなどの精神科訪問看護のサービスは基本的に「医療保険」を利用して行います。しかし、グループホームに入所している患者さんの多くは「介護保険」を利用しているため、基本的に精神科訪問看護のサービスを利用できません。
そのため、グループホームに入所している患者さんが医療保険を利用できる場合や、訪問看護ステーションとグループホームが個別で契約をしている場合は精神科訪問看護のサービス訪問が可能になります。
グループホームとは、患者さんが共同生活を送る小規模の介護施設です。各施設が提供するサポート内容は異なりますが、基本的に患者さんの自立を目指したサポートを重視している所が多いでしょう。
グループホームには、障がいがある方に対してサービスを提供する「共同生活援助」と、認知症の方が利用できる「認知症対応型共同生活介護施設」の2種類があります。
「共同生活援助」は、障がい者手帳を持っている障害支援区分1~6の認定を受けている方が利用できるグループホームで、主に以下のサービスなどを提供しているのが特長です。
一方、「認知症対応型共同生活介護施設」は、65歳以上で認知症の要支援レベルが2以上、または要介護レベル1〜5の方が入所できるグループホームです。
地域密着型のサービスのため、入所したい方はグループホームと同じ地域に居住し住民票を置いていることが条件となります。
また、グループホームには「ユニット型」と「サテライト型」と呼ばれる2種類の居住形式があります。
「ユニット型」はその名の通り、ユニットと呼ばれる単位で共同生活をするのが特長です。1ユニットにつき5〜9人の患者さんで構成され、お風呂場や食堂、体操などのレクリエーションを行う共同施設が併設されているグループホームに入所します。スタッフの目が行き届きやすいため、症状が重い患者さんでも安心でしょう。
「サテライト型」では、ユニット型の共同施設から少し離れた場所で一人暮らしを意識しながら生活できるのが特長です。必要な時にスタッフを呼び、ケアやサポートを依頼できるため、共同生活が得意ではない方や、自立した暮らしを望む方に向いているでしょう。
グループホームに入所している患者さんで訪問看護の対象となる方にはどのような条件が当てはまるのでしょうか。ここでは主な条件を4点解説します。
グループホームに入所している患者さんが訪問看護の対象になる条件の一つに、厚生労働大臣が定める疾病を持っていることが挙げられます。厚生労働省が定める具体的な疾病19種類と1つの状態は以下の通りです。
グループホームに入所している患者さんが主治医から「特別訪問看護指示書」を交付されるのも、医療保険を利用して訪問看護を受ける条件の一つです。
この指示書が交付される要件には、主に下記の3つが挙げられます。
特別訪問看護指示書の交付は原則として「1カ月に1度だけ14日以内での利用」と定められています。
しかし、気管カニューレを使用している患者さんや、真皮を越える褥瘡が認められる場合は1カ月に2回までの交付が可能です。
精神訪問看護基本療養費が算定されることも、グループホームにいる患者さんが訪問看護の対象になる条件の一つです。
前述した通り、精神科訪問看護は医療保険を用います。患者さんに主治医から「精神科訪問看護指示書」が発行されており、看護師が所属する訪問看護ステーションが精神訪問看護基本療養費の届出をしていると、医療保険を利用して精神科訪問看護のサービスを利用できるようになります。
訪問看護ステーションと個別の契約をしているグループホームに入居するのも、患者さんが訪問看護のサービスを利用できる条件の一つです。
グループホームが訪問看護ステーションと契約をすると「介護保険」を利用して訪問看護のサービスを受けられるのが特長です。
この場合、グループホームには「医療連携体加算」が支払われ、グループホームから訪問看護ステーションへは委託費用が支払われます。
患者さんの自宅・グループホームへの訪問には内容に違いがあるのでしょうか。訪問看護の基本的な業務内容は、基本的に大差がありません。
自宅へ訪問する場合、患者さんの主治医が交付した指示書や、ケアマネージャーが発行したケアプランに沿って「訪問看護計画書」を作成するのが一般的です。患者さんの状態を観察しながら、内服管理や入浴介助などの在宅ケアを行います。
一方、グループホームへ訪問する場合、各施設と結ばれた契約内容に基づいたケアを行うことが前提になります。患者さんのバイタルチェックや問診での観察、爪切りなど身の回りのケアやアドバイスなどが主な業務になるでしょう。グループホームで患者さんを担当している介護士と連携を取りながら対応していきます。
在宅、グループホームのどちらとも、基本的な患者さんのケアは同じです。必要に応じて主治医や医療関係者に情報共有を行い、チームで連携しながら患者さんをサポートしていきます。
精神科訪問看護師としてグループホームを訪問する際、どのような事に気を付けると良いのでしょうか。ここでは気をつけておきたいポイントを3点解説します。
グループホームを訪問する際、施設の従業員や入所している他の患者さんへの挨拶を忘れないようにしましょう。
初対面の相手には、挨拶と共にどこの訪問看護ステーションから派遣されてきた誰なのかをきちんと名乗ります。自分が訪問看護ステーションを代表した存在として見られていることを意識し、笑顔を心がけます。
挨拶は社会人の基本的なスキルで、大切なマナーの一つです。グループホームで会う方々に良い印象を与えて仕事をスムーズに行うためにも、挨拶を欠かさないようにしましょう。
グループホームを訪問する際、患者さんのプライバシーに配慮するよう気をつけましょう。
グループホームでは複数の患者さんが共同生活を送っています。患者さんの自宅を訪問する際とは異なり、患者さんの症状や個人的な悩みなどが周りの人に聞こえないように配慮が必要です。
プライベートな空間の談話室や会議室があれば利用し、ない場合はするのは部屋のカーテンを閉めたり周りの方への声かけを行ったりしましょう。患者さんのプライバシーに配慮した環境で話ができるよう臨機応変に対応しましょう。
グループホームへの訪問看護では、限られた時間の中でより多くの情報収集ができるようにしましょう。
特に、精神科訪問看護では、患者さんの普段の様子をスタッフから聞いたり、本人との会話を通して患者さんの変化に気付いたりして総合的な判断を下す必要があります。
患者さんの精神状態が落ち着いているように見えても、症状の急な悪化も予測されます。些細な変化をキャッチできるように、限られた時間の中でしっかりと情報収集を行いましょう。
本記事では、グループホームが精神科訪問看護のサービスを利用するために必要な条件と在宅ケアとの違い、グループホーム訪問の際に気をつけたいポイント3点を詳しく解説しました。
条件をクリアしていれば、患者さんがグループホームに入所していても精神科訪問看護のサービスを受けることは可能です。訪問看護師が自宅以外の施設を訪問する仕組みを理解し、患者さんが適切なサービスを受けられるようにしましょう。
本記事を読んで精神科訪問看護に少しでも興味を持った方やキャリアチェンジを検討されている方は、精神科訪問看護師募集サイト「ナースセブン」をご覧ください。
ナースセブンでは、精神科看護に関する情報や、主に精神科訪問看護に特化した「訪問看護ステーションALWAYS」で一緒に働いてくれる仲間の募集も行っています。