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精神病の家族がいる人が直面しやすい悩みやストレス、その対処法を解説

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厚生労働省の統計によると、何らかの精神病を抱える患者の数は約419.3万人といわれています。(※)また精神病の患者の大部分が、家族などのサポートを受けながら、外来診療を受けています。

※参考:厚生労働省. 「第13回 地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」P3

精神病の影響を受けるのは、患者本人だけではありません。精神病の家族をもつ人達も、患者との関わり方や精神症状との向き合い方に悩み、大きなストレスに直面しています。

本記事では、精神病の人の家族が直面しやすいストレスや、その対処法を詳しく解説していきます。

精神病の患者を支える家族のよくある悩みやストレス

精神病に罹ると、今までできたことができなくなったり、幻覚や妄想などの精神症状が現われたりします。精神病を抱える本人はもちろん、周囲の家族も急激な変化に戸惑い、以下のような不安やストレスを抱えてしまいかねません。

・精神病の患者とどう接したらよいか分からない
・精神病について誰に相談したらよいか分からない
・日常的な介助やサポートの負担が大きい
・暴力的な言動の恐怖やストレスが大きい

ここでは、精神病の患者を支える家族が直面しやすい悩みやストレスを詳しく解説します。

精神病の患者とどのように接したらよいか分からない

精神病の患者とどのように接したらよいか分からないというのは、その家族が直面する悩みの一つです。特に患者の家族からのよくある相談が、以下のようなケースです。

・部屋に引きこもっている
・通院や服薬をすぐにやめる
・希死念慮が見られる

例えば、本人が部屋に引きこもっている場合や、本人に病気の自覚がなく、通院や服薬をすぐにやめてしまう場合、どのように接したらよいか分からなくなる人がいます。

また「死にたい」という発言があるなど、希死念慮(自殺願望)が見られる人は、接し方を少しでも間違えると、自傷行為や自殺につながってしまう可能性もあります。

身近な人が心の病を抱えている場合、どのように接するのが正解なのでしょうか。

部屋に引きこもっている

部屋に引きこもっている場合、本人が抱える精神症状によって、正しい接し方が変わってきます。身近な人が引きこもり状態になっている場合、つい声を掛けたり、励ましたりしたくなるかもしれません。しかし、本人の精神状況や声掛けの回数によっては症状を悪化させてしまうおそれがあります。例えば、うつ病が原因で引きこもっている場合は、声掛けや励ましが逆効果となってしまう可能性があります。

引きこもっている人に声掛けをする場合は、1日1回程度にしましょう。また、してほしいことや必要なことなど、本人に要望を聞く形で最低限の声掛けを行うことが大切です。1カ月程度、声掛けをつづけても改善が見られない場合は、すぐに精神科に相談してください。

通院や服薬をすぐにやめる

家族が通院や服薬をすぐにやめてしまう場合は、主治医に現状を説明し、一度患者も交えた形で治療方針について話し合うことをおすすめします。

精神病の治療にはさまざまな種類がありますが、統合失調症や気分障害(うつ病など)では、薬物療法が主な治療です。しかし、精神病の患者の中には自分が病気だという自覚がなく、通院や服薬を拒否する人もいます。また、アルコール依存症をはじめとした依存症の人は、自分が依存状態であることを認めない否認(denial)を多かれ少なかれ持っています。「病院に行って」「薬を飲んで」と伝えても、なかなか指示に従ってくれないばかりか、激しい口論やすれ違いに発展してしまいかねません。

こうした問題を解決するために取り入れられているのが、共同意思決定(SDM)と呼ばれる仕組みです。共同意思決定とは、主治医と患者が話し合い、二人三脚で治療の方針を決める仕組みを指します。主治医が患者の話に耳を傾け、好き嫌いなども考慮しながら治療方針を決めていくため、患者にとって抵抗感があまりないのが特徴です。

希死念慮が見られる

家族に希死念慮が見られる場合、なるべく早く主治医に相談することが重要です。希死念慮とは「死にたい」「消えてなくなりたい」「もう楽になりたい」などと口にしたり、考えたりすることです。希死念慮のある状態を放置すると、本人が自傷行為や自殺など、極端な選択をとってしまう可能性があります。実際に自殺した人の行動を調査した結果、死にたいと周囲に伝えていた人がたくさんいたことが分かっています。

通院治療を受けている場合は、本人の周辺から危険物を取り除き、少しでも自殺のリスクを減らすことが大切です。しかし、希死念慮を抱えている人の自殺を完全に防ぐ方法はありません。患者の症状がどんどん悪化していく場合は主治医に相談し、強制入院などの措置も検討しましょう。

精神病について誰に相談したらよいか分からない

精神病について誰に相談したらよいか分からないという相談はよくあります。そのような場合には1人で悩まず周囲の人に相談するのが重要で重要です。身近に相談できる人がいない場合でも、国や自治体などの公的な相談窓口や、同じ境遇の家族が集まる『家族会』などの相談先があります。

・お住まいの地域の保健所や保健センター
・精神病の人の家族も利用できる『こころの健康相談統一ダイヤル』
・引きこもりの家族がいる人向けの、『ひきこもり地域支援センター』
・同じ悩みをもつ人が集まる、『家族会』

もちろん、お近くの精神科や心療内科を受診し、専門家に相談することも大切です。精神科や心療内科によっては、患者本人がいなくても、家族だけで医師に相談できるケースもあります。また精神科に特化した訪問看護ステーションなら、看護師が直接自宅を訪問してくれるため、患者が外出する必要はありません。

暴力的な言動の恐怖やストレスが大きい

暴力的な言動の恐怖やストレスが大きいという相談もよく見受けられます。患者の症状によっては、言動が暴力的になってしまう場合があります。暴力的な言動を受けたら、すみやかに主治医に相談してください。無理に1人で対処しようとせず、安全確保のため、本人から一時的に距離をとることも大切です。例えば、統合失調症の症状が悪化すると、激しい興奮や攻撃性を示し、周囲の人に危害を加える可能性があります。

しかし、精神症状が治まるにつれて、暴力的な言動もだんだん落ち着いてきます。患者の言動は本人に責任があるのではなく、病気が原因だということを理解し、本人を責めたり批判したりしないようにしましょう。

厚生労働省が紹介する家族の基本的な対応5つ

厚生労働省が運営している働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト(こころの耳)では、身近な人が精神病に罹ったときの基本的な対応方法を5つ挙げています。精神病の人への接し方に困ったら、厚生労働省の基本的な対応を意識してみましょう。(※)

基本的な対応特徴
精神病になった原因を探さないなぜ、この人は病気になってしまったのだろう、自分たちに何か問題があったのかと考えるのではなく、今できることを中心に考える
患者を励まさない患者を励ますことで、もうこれ以上頑張れない、何もできない自分が情けないと症状を悪化させてしまう可能性があるため、患者の症状や状況に合わせて対応を考える
無理に特別なことはしない患者の元気がない状態で、無理に気分転換をさせようとせず、自然に楽しみたい気持ちが湧いてくるのを待つようにする
大きな決断は先延ばしにする患者が退職や離婚などを口にしても、症状が改善しないうちは大きな決断をさせず、本人の気持ちに寄り添いながら先延ばしにする
できる範囲で受診に付き添う患者が精神病や心療内科を受診するときは、できる範囲で付き添い、主治医と情報を共有する

※参考:厚生労働省(こころの耳). 「ご家族にできること」. “こころの病気への基本的な対応を理解する”

精神病の治療では、医療機関から家族の協力を求められることがたくさんあり、強い責任を感じてしまう人が一定数います。確かに精神症状をこれ以上悪化させないため、周囲の人の言動一つひとつが重要になってくるのも事実です。

しかし、精神病の家族を支えるために頑張りすぎると、自分自身も疲弊してしまい、共倒れになるリスクがあります。また患者の状況を少しでも改善しようと、患者に励ましの言葉をかけたり、気分転換をさせようと連れ出したりすると、かえって心のエネルギーを消耗させ、症状を悪化させてしまう可能性もあります。

精神病の人に接するときは、無理に特別なことをしようとせず、今できることを中心に考えることが大切です。患者が精神病や心療内科を受診する際に、なるべく付き添うようにすると、主治医との会話を通じて、今できることのヒントが分かることもあります。

精神病の人を支えるためには、家族の側にも心と体のゆとりが求められます。まずは肩ひじ張らずに、精神病を抱えた人への基本的な対応から実践してみましょう。

身近に精神病の家族がいる場合は、正しい接し方を知っておくことがストレス予防に

身近に精神病の人がいる場合は、サポートする家族も大きな不安やストレスに直面します。精神病の方への接し方に迷ったら、国や自治体などの公的な相談窓口や、お近くの精神科・心療内科に相談してください。

無理に1人で対処しようとすると、ケアする側が心身ともに疲弊し、共倒れになってしまう恐れもあります。厚生労働省が紹介する5つの基本的な対応を参考にしながら、自分にできる範囲で患者と向き合っていくことが大切です。時にはプライベートな時間も確保し、心と体にゆとりを持ちながら、精神病を抱える人をサポートしていきましょう。

久喜すずのき病院が運営するナースセブンでは、精神症状を抱える人をケアする精神科看護についての情報を発信しています。精神科看護に興味がある人や、精神科看護師を目指す人は、ぜひ参考にしてください。

また「訪問看護ステーションALWAYS」で一緒に働いてくれる仲間を募集しております。訪問看護ステーションALWAYSは、平成31年1月から発足した精神科に特化した訪問看護ステーションです。ご興味がある方は是非ご応募ください。

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