訪問看護による在宅ケアを受けている患者さんの中には、服薬による治療を受けている方も少なくありません。在宅ケアの中で内服管理を正しく行い、患者さんをサポートすることは訪問看護師の大切な役割の一つです。
では、訪問看護師が行える服薬管理には具体的にどのような方法があるのでしょうか。
本記事では、訪問看護での内服管理の定義とその重要性、服薬管理が必要なケースの例3つと訪問看護師が行える具体的なアプローチを6つご紹介します。本記事を読んで、訪問看護師が行っている内服管理について詳しくなりましょう。
内服管理とは具体的にどのような管理を指すのでしょうか。
内服管理とは、患者さんが医師の診察を受けて処方された薬を指示通りに内服できているかの確認や調整を行う事です。身体的な疾病などで薬を飲む事が困難な方や、精神に疾患があり服薬が難しい方の介助なども含まれます。
患者さんの中には、服薬に対してネガティブな印象を持っていたり、重要性が理解できていなかったりする方もいます。服薬のスケジュールを守れずに飲み忘れてしまう方や、過剰に内服してしまうケースも少なくありません。
患者さんの病状の治療だけでなく、患者さんの安定した生活を維持するための方法の一つとして、内服管理は大きな役割を果たしています。
訪問看護で行う服薬管理にはどのような重要性があるのでしょうか。
訪問看護は患者さんの自宅を訪問して行うため、薬の内服方法や回数、内服のために必要な援助などを訪問看護師が総合的に判断してサポートしていきます。
サポートの具体的な内容として、患者さんの病状に薬が正しく作用しているかの確認や、副作用の症状が出ていないかなどの観察があります。治療の効果が確認できなければ医師に情報共有を行い、治療や服薬などを調節して治療計画の変更を行うなどの対応が必要です。
特に精神疾患のある患者さんは、服薬により精神の安定を図っているケースもあります。継続的な服薬を続けると精神疾患の症状が安定し効果的な治療ができるため、服薬管理が果たす役目はとても大きいでしょう。
また、訪問看護師がしっかりと服薬管理を行うと患者さんの症状が安定し、再入院のリスク減少にもつながります。
訪問看護で服薬管理が必要なケースにはどのようなものが挙げられるのでしょうか。ここでは具体的な例を3つ解説します。
服薬管理が必要なケースの一つは、服薬の自己管理が難しいケースです。
疾病や疾患の治療で複数の薬を処方されていると、自己管理が難しいと感じる方も少なくありません。例えば、薬によって食前・食後の指定が違う、服薬する時間帯が決まっている、1日に服薬する回数が違うなどの条件を理解して管理する場合です。
患者さんが服薬のスケジュールに沿えない場合、治療の効果を十分に期待できなかったり、心身に影響が出たりする可能性があります。訪問看護師が患者さんの処方されている薬の効果や服薬方法をきちんと理解してサポートを行う必要があります。
特に精神科訪問看護では、うつ病などの治療に使用する「抗うつ薬」「抗不安薬」などの精神薬を急に止めると心身に不調が出やすくなるため注意が必要です。患者さんによって症状や期間に差がありますが、一般的に服薬を中断して2日前後から以下のような症状が現れる方もいます。
これらの症状は総称して「離脱症状」と呼ばれ、短くて1週間、長くて数カ月の間症状に悩む患者さんも少なくありません。精神科訪問看護師が服薬管理を正しく行い、離脱症状を未然に防ぐようにしましょう。
服薬管理が必要なケースに、定期的に体調確認が必要なケースも挙げられます。
効果の強い薬を処方されている患者さんの場合は、訪問看護師による定期的な服薬確認と体調のチェックが必要です。効果の強い薬の例として、糖尿病や高血圧など慢性疾患の治療に使われる薬が挙げられます。慢性疾患の治療に使われる薬は、血糖値や血圧の数値に直接的に作用するため体調にも影響しやすいでしょう。
訪問看護師は必要に応じて数値測定を行うなどで患者さんの体調を確認し、変化があれば医師などと連携して適切な服薬管理を行います。
服薬の支援が必要な場合も、服薬管理が必要なケースの一つです。
患者さんの中には認知症や身体的な障害があり、日常的な服薬が困難な方もいます。認知力の低下などで服薬のスケジュールが不定期になると症状の悪化につながる可能性もあります。
訪問看護師は患者さんや在宅ケアに関わっている家族を巻き込みながら服薬管理のサポート体制を提案、改善し、患者さんが正しく服薬できる環境作りをしていきます。
訪問看護師が行える具体的な服薬管理のアプローチにはどのようなものが挙げられるのでしょうか。ここでは具体的なアプローチの例を6つ解説します。
残薬の整理整頓は、訪問看護師が行える具体的な服薬管理のアプローチの一つです。
患者さんの中には、過去にさまざまな薬を処方されている方もいます。訪問看護サービス開始時に、患者さんの自宅には現在服薬しているものと昔の治療の残薬が混在しているケースもあります。
患者さんが残薬を誤って服薬すると現在の治療に影響が出る可能性があるため、関係者の同意を得て処分しておくと安心でしょう。
服薬スケジュールの確立も、訪問看護師が行える服薬管理の方法の一つです。
患者さんが服薬スケジュールを確立できていないと、薬の飲み忘れや過剰摂取につながる可能性があります。担当する患者さんの性格や生活スタイルに合わせて、服薬スケジュールを守れるような仕組みを確立してあげましょう。
例えば、服薬カレンダーを活用して1日の服薬スケジュールを分かりやすく示す、薬を置く位置を生活動線の上に置く、1週間分の内服薬を服薬ケースに入れて明確に仕分けするなどが挙げられます。服薬カレンダーや服薬ケースは市販されているものを活用し、必要であれば輪ゴムや付箋、ジッパー付きの保管袋などを活用して分かりやすく仕分けをするとよいでしょう。
頻繁に飲み忘れが起こり改善が見られない場合は、主治医に報告を行い処方の内容を再検討するケースもあります。
訪問看護師が行える服薬管理の方法の一つに、服薬に対する意識付けも含まれます。
近年では、医療現場で「アドヒアランス」という言葉が浸透してきました。アドヒアランスとは、患者さんが自分の抱える病気を受け入れて、医師の指示に従いながら積極的に薬を用いた治療に関わることを指します。
アドヒアランスが不良だと、治療効果を正しく判断できない、期待した効果が得られない、治療が長引き医療コストがかさむなどの影響が出る可能性があります。
患者さんのアドヒアランスをうまく引き出して治療を行うために、訪問看護師は患者さんがなぜ「服薬しないのか」の視点に着目してみましょう。服薬のアドヒアランスが思わしくない患者さんには、さまざまな理由があります。
例えば、精神訪問看護を利用している患者さんであれば精神薬による副作用を嫌がるケースも少なくありません。抗精神薬の中には、手が震える、強い眠気、物がぶれて見えるなどの副作用が起こりやすい物もあります。患者さんによって副作用の出方に差がありますが、副作用を恐れて服薬を嫌がる方の気持ちに寄り添い、減薬や薬の変更が可能かを医師に相談するなどの対応が患者さんのアドヒアランス改善につながります。
患者さんが自分の病状や服薬する薬の効果を理解してより主体的に治療に関われるように、アドヒアランスを意識して服薬管理につなげていきましょう。
継続的なモニタリングも訪問看護師が行える服薬管理のサポートの一つです。
訪問看護師は主治医の指示や服薬治療の方針を理解して、薬の効果が出ているか、副作用が起きていないかなど患者さんの様子を継続的にモニタリング、報告していきます。
継続的なモニタリングを行うと患者さんの些細な体調変化に気付きやすくなり、副作用や薬との相性の良し悪しを早期発見、改善につなげられます。
訪問看護師が継続的にモニタリングを行い、医師や医療関係者と連携すると患者さんにより適切な服薬管理を行えるでしょう。
訪問看護師が行える具体的な服薬管理サポートの一つとして、家族への教育とサポートも挙げられます。
患者さんが家族と同居していたり身近な介助者が居たりする場合は、服薬に関する教育を行って在宅ケアに参加してもらえる環境作りを行いましょう。家族や介助者が在宅ケアへの理解を深め、積極的に服薬管理に参加すれば、患者さんの服薬アドヒアランスの向上や服薬の継続性を高められる可能性が高くなります。
また、訪問看護師が現場に居ない間に信頼できる人がケアをしてくれると、飲み忘れや過剰摂取を防ぎやすくなり患者さんの安全性も高まるでしょう。
多職種との連携も訪問看護師が行える服薬管理のサポートの一つです。
訪問看護師は、患者さんと主治医や薬剤師など医療関係者の間に立つ橋渡し的な存在です。患者さんが積極的に服薬治療に取り組めるように、医療関係者と患者さんの間でうまく連携を行いサポートを行いましょう。
薬剤師と連携を密にすると、患者さんの治療に使う薬の効果や相互作用、副作用など薬物療法でのリスクへの理解を深められたり、主治医と連携すると患者さんの状態、治療計画の把握を行い服薬管理に役立てられたり相乗効果が望めます。
患者さんに寄り添った服薬管理ができるように、報告・連絡・相談を欠かさず医療関係者と連携して在宅ケアをサポートしていきましょう。
本記事では、訪問看護での内服管理の定義とその重要性、服薬管理が必要なケースの例3つと訪問看護師が行える具体的なアプローチを6つ解説しました。
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