精神科訪問看護師として働くには、どのような資格が必要かご存知でしょうか。看護師・准看護師の資格はもちろん、精神科訪問看護基本療養費算定要件研修への参加が必要です。精神科の看護経験がなくても入職できる精神科訪問看護では、この研修を受けて算定要件を満たす必要があります。
本記事では、精神科訪問看護師に必要な資格・条件と、精神科訪問看護基本療養費算定要件研修の受講方法、精神科訪問看護師が持っておくと役立つ資格をいくつか解説します。精神科訪問看護師を目指している方や、転職を考えている方は、本記事を読んで必要な研修や資格を事前に知っておきましょう。
精神科訪問看護師として働くには、どのような資格や条件が必要なのでしょうか。ここでは、精神科訪問看護師に必要な資格や条件を3つ解説します。特に精神科訪問看護基本療養費算定要件研修は精神科での看護経験がない方は受講が必須であるため、受講の流れや研修内容を詳しく見ていきます。
精神科訪問看護師に必要な資格の一つが、看護師・准看護師の資格です。
看護師免許は厚生労働大臣が発行する免許で、准看護師免許は都道府県知事発行の免許です。どちらも養成課程のカリキュラムを修了し、試験を受ける必要があります。
看護師と准看護師では単位取得にかかる履修時間が異なり、准看護師の方が免許取得の必要期間が短いです。
精神科訪問看護師に必要な条件の一つに、精神科での勤務経験が挙げられます。
精神科訪問看護ステーションに所属する際、基本的に看護師免許があれば未経験者でもよい所や、精神科勤務経験1年以上の条件を設定している所もあります。
1年以上の勤務経験を求めるのは、精神科訪問看護ステーションが訪問看護サービスの診療報酬として受け取る「精神科訪問看護基本療養費」を受ける要件に「精神疾患を持つ患者さんへの相当の経験を有する」という条件が定められているためです。「相当の経験」とは、具体的に以下のいずれかの経験を指します。
精神科での看護経験を持たず訪問看護ステーションに入職した場合は、精神科訪問看護研修を修了して算定要件を満たすだけでなく、先輩看護師に同行して訪問看護を行い、不足している経験を補うケースもあります。
精神科訪問看護基本療養費算定要件研修も、精神科訪問看護に必要な条件の一つです。
この研修は前述した通り、精神科訪問看護ステーションの「精神科訪問看護基本療養費」の算定要件を満たすための研修です。精神疾患を持つ方への理解を深めて必要な知識や技術を習得するだけでなく、多職種連携の必要性や適切な看護の実践能力を高めることができます。研修のカリキュラムには具体的に以下のポイントが含まれます。
研修を受ける方法や受講の流れ、受講形式、費用、期間を詳しく見ていきましょう。
精神科訪問看護基本療養費算定要件研修を受けるには、どのような方法で申し込めばよいのでしょうか。
この研修は全国各地でさまざまな団体が主催しており、研修を主催している団体のWebサイトから申し込むことができます。入職した訪問看護ステーションが特定の団体に加入している場合は、会員価格で受験ができるケースもあります。申し込む前に確認しておくとよいでしょう。
精神科訪問看護基本療養費算定要件研修の、受講から修了までの大まかな流れは以下の通りです。
基本的にオンラインで申し込みが完結します。
精神科訪問看護基本療養費算定要件研修の受講形式には、対面式とオンライン式の2つがあります。それぞれのメリットは以下の通りです。訪問看護ステーションが推奨する形式がある場合はそちらを受講し、指定がなければ自分が学びやすい形式を選ぶようにしましょう。
精神科訪問看護基本療養費算定要件研修の研修期間や費用はどのくらいなのでしょうか。
研修を主催する団体により差はありますが、平均的な受講時間は20〜23時間ほどで、受講期間は3日間ほどです。研修に必要な費用は、オンライン形式の場合15,000~30,000円ほど、都道府県が主に実施している対面研修の場合は20,000〜40,000円ほどです。
精神科訪問看護師になるために役立つ資格にはどのようなものがあるのでしょうか。ここではいくつかの資格を解説します。
精神科訪問看護に役立つ資格として、精神科認定看護師や専門看護師が挙げられます。
どちらの資格も日本看護協会が認定している資格です。これらの資格を持っていると、精神科の看護領域に関する知識を持ち、優れた看護能力を持つエキスパートとして評価されるでしょう。精神看護に関する相談を患者さんや家族から受けたり、スタッフの指導を行ったりすることも可能です。そのため、所属する訪問看護ステーション全体の知識を向上させる人材として活躍できる可能性が高いでしょう。
精神科認定看護師・専門看護師ともに、看護師としての実践経験を持ち、指定された教育課程を修了して認定審査に合格する必要があります。
精神科認定看護師は精神科のスペシャリストとして、専門看護師は以下の幅広い14分野のスペシャリストとして特定されています。専門看護師の場合、精神科訪問看護を利用している患者さんが精神以外の病気を併発している場合に専門性を発揮できるでしょう。
ケアマネージャーも、精神科訪問看護師になるために役立つ資格の一つです。
ケアマネージャーは「介護支援専門員」とも呼ばれています。要支援や要介護の認定を受けた方が社会福祉サービスを受けるために関わる専門職員です。具体的には、介護サービス提供計画である「ケアプラン」の作成や、市町村やサービス事業者、施設などとの連絡調整を行います。
精神科訪問看護を利用する患者さんには、介護保険を適用している方もいます。ケアマネージャーの資格を持っていると、そのような患者さんの相談に応じたり、ケアマネージャーの視点を活かした在宅ケアの提案をしたりできます。専門性を活かした働き方ができるため、重宝されるでしょう。
認知症ケア指導管理士・認知症ケア専門士も、精神科訪問看護師になるために役立つ資格です。
認知症ケア指導管理士は、一般社団法人総合ケア推進協議会ならびに一般財団法人職業技能振興会が主催している認定資格です。この資格を持っていると、認知症を患っている患者さんへ適切なケアを行えます。また職員や家族などへの指導を行うなど、訪問看護の医療現場などで認知症ケアに携わる方の知識・技能の向上に貢献できるでしょう。
認知症ケア専門士は、一般社団法人日本認知症ケア学会が主催している認定資格です。この資格があると、認知症を患っている患者さんやご家族に対して専門的な知識と技能を持ってケアを提供できます。また認知症ケア専門士の資格を継続するには更新が必要で、認定後も生涯を通して認知症に対する学習を深めることが必要とされています。認知症の専門的な知識や技術を常に学んでいる姿勢をアピールできるでしょう。
どちらの資格も、取得すると認知症を患っている患者さんとご家族のケアに役立ちます。高齢化が進んでいる昨今、認知症に関する資格を持っていると精神科訪問看護の現場でも重宝されるでしょう。
JSAトリートメントMAS認定臨床看護師も、精神科訪問看護師になるために役立つ資格の一つです。
JSAトリートメントMAS認定臨床看護師は、一般社団法人日本アロマセラピー学会(JSA)が主催している認定資格です。この資格を持っていると、アロマセラピーに関する知識と技術を持つ訪問看護師として、患者さんにアロマを用いたケアを提供できます。
通常の看護に加えて、患者さんの精神疾患の状態や気分に適した精油を選び、マッサージや手足浴を行うことができます。アロマを用いることで患者さんの精神を落ち着かせたり、リラックスさせたりすることができるでしょう。
心理学に関する資格も、精神科訪問看護師になるために役立つ資格の一つです。
心理学に関する資格には「JADP認定メンタル心理カウンセラー」や「メンタルケア心理士」などがあります。
JADP認定メンタル心理カウンセラーは、一般財団法人日本能力開発推進協会が主催している認定資格です。この資格を持っていると、医療や福祉などの現場で求められる優れたカウンセリング能力を有すると証明できるでしょう。
メンタルケア心理士は、メンタルケア学術学会が主催している認定資格です。精神医学の基礎知識なども学習に含まれており、精神科訪問看護の現場で役立つ知識を学べます。
どちらの資格も、精神科訪問看護で役立つカウンセリングの技術を積極的に学んでいる姿勢を示すことにも役立つでしょう。
本記事では、精神科訪問看護に必要な資格・条件と精神科訪問看護基本療養費算定要件研修の受講方法、精神科訪問看護師が持っておくと役立つ資格をいくつか解説しました。
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