精神科訪問看護は年々需要が高まっているものの、費用が気になって利用をためらっている方もいるのではないでしょうか。また「どの医療保険を使えばいいのか」や「自己負担費用はどれくらいになるのか」という疑問もよく聞かれます。
保険の種類だけでなく、費用や申請の仕方など精神科訪問看護にまつわる手続きは難しいイメージがあり、混乱する方も少なくありません。
本記事では精神科訪問看護の保険適用について、公的保険の種類と適用されるケースや併用の可否、精神科訪問看護を受ける際の自己負担割合と利用方法、負担軽減制度について詳しく解説します。本記事を読んで精神科訪問看護の医療保険を正しく理解しましょう。
※制度の概要や限度額については、2024年1月時点の情報です
目次
訪問看護の公的保険には「医療保険」と「介護保険」があります。ここではそれぞれの保険の違いや特徴を解説します。
医療保険とは、日本国民の方が加入を義務付けられている病気や怪我のときに利用する公的保険です。公的な医療保険に国民全員が加入することで、国民の安心・安全な暮らしが送れることを保障するのが目的です。
医療保険は、病院を受診する際に「健康保険証」を提示して利用します。自己負担額は年齢や収入に基づいて差があり、病院から請求された額の1〜3割を負担します。
また、公的な医療保険には以下の種類があり、職業や年齢によって加入する健康保険が異なるのも特徴です。
介護保険とは、40歳になるタイミングで国民の誰もが加入する公的保険です。要支援・要介護の認定を受けた方が利用できる公的保険で支援・介護のレベルに応じたサービスを受けることができます。
介護保険の自己負担額は請求された額の1〜3割で要支援・要介護のレベルによって変化します。また、支給限度額があるのも特徴です。
40〜64歳までは「第2号被保険者」として区分され、厚生労働省が定めた16種類の特定疾病による要介護認定を受けた方のみが、介護保険を利用できます。65歳以上の方は「第1号被保険者」として区分され、要支援・要介護認定を受けると利用できます。
「要介護認定」を受けるには、市町村の介護保険を担当する窓口か居住している地域の包括支援センターへの申請が必要です。申請後は主治医意見書の提出や職員の訪問によって認定調査を行い、以下の流れに沿って結果判定・通知が行われるのが一般的です。
精神科訪問看護では基本的に「医療保険」が適用されます。
しかし、精神科訪問看護を受けていても認知症と診断されたり要介護・要支援認定を受けたりすると「介護保険」が優先されて保険が切り替わるケースがあります。
平成26年度の診療報酬改訂では、介護保険を認定されていても精神科の主治医から精神科訪問看護指示書が交付されると、週3回までの精神科訪問看護を「医療保険」で受けることが可能になりました。
精神科訪問看護で介護保険が適用されるのは、どのようなケースなのでしょうか。ここでは大きく分けて2つのケースをご紹介します。
医師から認知症と診断されると、精神科訪問看護で介護保険が適用されます。
しかし、各医療機関の算出方法によっては医療保険適用の方が望ましいケースもあるため、不明であればかかりつけの医療機関や訪問看護ステーションに確認をしましょう。
正式に要介護・要支援認定を受けた場合も、精神科訪問介護で介護保険が適用されます。
要介護・要支援の定義・支援レベルは以下の通りです。
認定が出ると、担当のケアマネージャーが支援や介護レベルに適したケアプランを作成し、介護保険を通して利用できるサービスを紹介してもらえます。要介護と要支援認定では利用できるサービスが違うのも知っておきたいポイントです。
介護保険の主な保障として、以下が挙げられます。
基本的に、精神科訪問看護では医療保険と介護保険は併用できません。要介護認定を受けているケースであれば、介護保険が優先されるのが一般的です。
基本的にどちらかの保険が優先されるため、長期の治療で条件が変わり保険の切り替えを行うケースも少なくありません。かかりつけの医療機関や担当のケアマネージャーに相談して適切な方法を選ぶようにしましょう。
精神科訪問看護を受ける際の自己負担額はどれくらいでしょうか。
医療保険で精神科訪問看護を利用すると、自己負担額は請求額の1〜3割です。どの割合が適用されるかは年齢・所得で変わります。医療保険の月額負担額とその割合は以下の通りです。
介護保険で精神科訪問看護を利用すると、自己負担額は請求額の1割です。一定以上の所得者の場合は、負担額が2割か3割まで増えるケースもあります。
また、要支援・要介護の違いと、支援・介護の必要レベルごとに限度額があります。限度額を超えてサービスを利用すると、超えた額は全額自己負担となるので注意が必要です。
※参考:厚生労働省. 「介護保険の解説サービスにかかる利用料」
実際に精神科訪問看護を利用したい場合、どのようにして手続きするのでしょうか。ここでは、精神科訪問看護を利用するための基本情報を解説します。
まず、精神科の主治医によって発行された「精神科訪問看護指示書」を事前に入手しておきましょう。入手できたら個人で選んだ訪問看護ステーションへ直接申し込みを行うか、地域の保健師・医師への利用相談を経て利用申し込みをします。
申し込みが受理されたら、精神科訪問看護サービスの利用を開始します。原則として利用頻度は週3日まで、利用時間は1回につき30分程度です。
しかし、以下に該当する方はそれ以上の利用ができます。
「精神科特別訪問看護指示書」は、患者さんが精神的に不安定だったり症状が短期間で悪化したりする際に、医師の判断で訪問看護が必要だと判断されたときに発行される指示書です。必要に応じて14日までの利用が可能となるのが特徴です。
また、病院を退院した後3カ月間は、患者さんの経過観察が必要になるので医師の指示がある場合につき週5日までの利用が可能です。患者さんと精神科訪問看護師の信頼関係を築くために、必要と判断されることもあります。
精神科訪問看護を通して利用できる医療サービスには、以下のものが挙げられます。
医療保険以外の精神科訪問看護の負担軽減制度として挙げられるのが、自立支援医療制度(精神通院医療)です。
自立支援医療制度は、障害のある方の経済的な負担を軽減する「公費負担医療制度」です。精神疾患を抱える患者さんの心身の障害を取り除いたり、軽減したりすることを目的としています。この制度に申請すると、通院費・薬代・精神科訪問看護を利用した費用の一部を補填できます。
この制度に申請できる対象者の定義は3つありますが、精神科訪問看護を受けている方の多くは「精神通院医療」に当たります。
精神保険福祉法第5条に規定されている統合失調症などの精神疾患を持っており、通院による精神医療が継続的に必要だと診断されているなどの条件に該当しする方は、居住している市町村の市役所や役場に申請できます。
申請者の区分と上限額は以下の表の通りです。低所得世帯は段階的に負担が軽減され、生活保護世帯の自己負担はなく、どちらにも該当しない方は原則1割負担です。所得に応じて区分が変わるので、注意しましょう。
本記事では精神科訪問看護の医療保険について、公的保険の種類と適用されるケースや併用できるかについて、精神科訪問看護を受ける際の自己負担割合と利用方法、負担軽減制度の内容を詳しく解説しました。
精神疾患は長期的な治療やケアが必要な場合もあります。公的保険や助成制度をうまく使いながら精神科訪問看護を利用し、大切なご家族の治療と向き合いましょう。
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