訪問看護の中でも、精神的な疾患を抱えた方をケアするのが精神科訪問看護です。精神科訪問看護は一般的な訪問介護と比較すると、利用者の自宅に訪問してどのようなことを行うのかイメージがつきにくいかもしれません。
本記事では、精神科訪問看護の主な仕事内容や、訪問サービスの利用者の特徴、精神科訪問看護に向いている方の共通点を解説します。
目次
精神科訪問看護とは、精神的な疾患を抱えた方の自宅を訪問し、看護ケアを提供するサービスです。厚生労働省によると、精神訪問看護は「精神障害をもって地域で暮らす人の健康と生活を支え、利用者と家族のリカバリーを支援する医療サービス」と定義されています(※)。精神科訪問看護が提供されるのは、主に単科の精神科病院や、精神科を主とする訪問看護ステーションなどです(※)。
精神疾患を抱える方の中には、医療機関の受診が難しい方や、事情があって自宅から出られない方もいます。精神科訪問看護では、看護師や作業療法士が利用者の自宅を直接訪問し、外部サービスとの関わりが難しい方を支援します。
精神科訪問看護の強みは以下の2点です。
・利用者の家族への支援も提供し、家族ぐるみで長期的な関係を築ける
・住み慣れた自宅でケアを提供するため、利用者にとって安心感や孤独を和らげる効果がある
精神訪問看護は相談相手になってくれる、生活をサポートしてくれる、体調管理をしてくれるといった理由から、利用者の満足度が高いのが特徴です。厚生労働省によると、現在利用している訪問看護に満足している人の割合は、事業所(ステーション)の利用者、病院の利用者ともに約90%[1] となっています(※)。
※参考:厚生労働省(学校法人 聖路加国際大学). 「地域における支援ニーズの高い者に対する精神科訪問看護の実態調査報告書」. P2
※参考:厚生労働省(一般社団法人 日本精神科看護協会). 「精神科訪問看護に係る実態及び精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける役割に関する調査研究報告書」. P23, 124
精神科訪問看護のサービスは、主にどのような方が利用しているのでしょうか。厚生労働省によると、精神科訪問看護の利用者の年齢層は以下の表のとおりです(※)。
年齢 | 割合 |
10歳代 | 0.8% |
20歳代 | 5.1% |
30歳代 | 11.1% |
40歳代 | 18.8% |
50歳代 | 25.4% |
60歳代 | 21.1% |
70歳代 | 13.5% |
80歳以上 | 3.9% |
無回答 | 0.3% |
10代の方から80歳以上の方まで、幅広い年齢層の方が精神訪問看護を利用していますが、40代~60代の方が全体の6割以上を占めています。
また、精神科訪問看護を利用する方の主病名(主なケアの対象となる病名)についてもみてみましょう(※)。
主病名 | 割合 |
統合失調症・妄想性障害 | 63.5% |
気分障害 | 9.4% |
アルコール・薬物使用障害 | 3.6% |
発達障害 | 3.3% |
不安障害・ストレス関連障害 | 3.2% |
パーソナリティ障害 | 2.0% |
高次脳機能障害 | 0.5% |
その他 | 9.3% |
精神訪問看護の利用者の63.5%が、主に統合失調症・妄想性障害のケアを受けています。その次に多いのが、うつ病や躁病をはじめとした気分障害(9.4%)です。
その他にも、精神訪問看護では、精神的な疾患によって日常生活を送ることが難しくなった方のケアを行っています。ひきこもり状態に陥った方や、妊娠期や子育て期に精神疾患と戦っている方、身体合併症を患っている方など、さまざまな方の症状を緩和し、ケアを提供するのが精神訪問看護の役割です。
※参考:厚生労働省(一般社団法人 日本精神科看護協会). 「精神科訪問看護に係る実態及び精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける役割に関する調査研究報告書」. P80, P83
厚生労働省によると、精神科訪問看護で提供されるケア内容は、大きく8つに分けられます(※)。
ケア内容 | 特徴 |
日常生活の維持/生活技能の獲得・拡大 | 食生活・活動・整容・安全確保、などのモニタリングおよび技能の維持向上のためのケア |
対人関係の維持・構築 | コミュニケーション能力の維持向上の援助、他者との関係性への援助 |
家族関係の調整 | 家族に対する援助、家族との関係性に関する援助 |
精神症状の悪化や増悪を防ぐ | 症状のモニタリング、症状安定・改善のためのケア、服薬・通院継続のための関わり |
身体症状の発症や進行を防ぐ | 身体症状のモニタリング、生活習慣に関する助言・指導、自己管理能力を高める援助 |
ケアの連携 | 施設内外の関連職種との連携・ネットワーキング |
社会資源の活用 | 社会資源に関する情報提供、利用のための援助 |
対象者のエンパワーメント | 自己効力感を高める、コントロール感を高める、肯定的フィードバック |
※出典:厚生労働省(今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会). 「訪問看護について」. P3
精神科訪問看護では、利用者の症状改善を目指して、体調の変化の測定(バイタルチェック)や、処方薬を適切に処方できているかの確認(服薬管理)などを行います。精神科訪問看護の利用者には、糖尿病や循環器疾患など、生活習慣病を中心とした身体合併症を抱えている方が少なくありません(※)。精神症状だけでなく、身体症状のケアも行っていくのが看護師の仕事です。
精神科訪問看護の仕事はそれだけではありません。利用者の日常生活のサポートや、コミュニケーション能力の向上に向けた訓練など、幅広い分野でケアを提供します。
また、利用者を支える家族の心身の負担を軽減するのも、精神科訪問看護の大切な仕事の一つです。他の医療機関や市区町村の窓口など、施設内外の機関とも連携しながら、利用者と家族が円滑な関係を築くためのサポートを行います。
精神科訪問看護は、精神疾患に苦しむ方をさまざまな方面でケアし、社会復帰に向けてサポートするやりがいのある仕事です。精神科訪問看護に興味がある方は、精神科訪問看護に特化した募集サイトのナースセブン(Nurse7)にお問い合わせください。
※参考:厚生労働省(一般社団法人 日本精神科看護協会). 「精神科訪問看護に係る実態及び精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける役割に関する調査研究報告書」. P107
精神科訪問看護に向いているのは、以下の2つの特徴に当てはまる方です。
・利用者の強みを見つけ、成長を後押しできる人
・利用者と適度な関係を保つことができる人
精神科訪問看護の重要な役割の一つが、利用者のエンパワーメントです。エンパワーメントとは、利用者に自信を持たせ、自分自身をコントロールして、日常生活を主体的に送れるように働きかけることを意味します。
そのため、利用者の強みを見つけ、成長を後押しできる人が精神科訪問看護に向いているといえます。どんなに小さなことでも、利用者が努力したことや成長できたことがあったら言葉で褒めましょう。利用者の強みを発見し、言葉で褒めるという行為を通じてエンパワーメントにつながります。
一方で、利用者と適度な関係を保つことも大切です。精神症状を緩和するには、利用者とコミュニケーションをとって、ゆっくりと心の距離を縮めていく必要があります。
しかし、利用者との関係が物理的にも心理的にも近すぎると、利用者が依存心を抱いてしまうこともあるため、適度な距離感が必要です。一人の人間として相手を思いやり、適度な距離感で利用者と接するようにしましょう。
精神科訪問看護は、精神疾患を抱えた利用者の自宅を訪問し、看護ケアを提供する医療サービスです。利用者の健康管理や服薬管理だけでなく、日常生活を送るためのサポートや、利用者を支える家族のケアも行います。利用者の一人ひとりとしっかり向き合えるため、症状の改善がみられたときなどは大きなやりがいを感じるでしょう。
精神科訪問看護の仕事を探している方は、精神科訪問看護師募集サイトのナースセブン(Nurse7)をご利用ください。ナースセブンでは、「訪問看護ステーションALWAYS」を中心として、精神科訪問看護で働く看護師の方を募集しています。出産・育児のサポートも充実しているため、子育てしながら働きたい方や、出産後の復職を目指す方もぜひご利用ください。