精神科の看護師は精神科医と連携し、統合失調症やうつ病、アルコール依存症などの精神疾患の回復をサポートする仕事です。精神科の看護師には具体的にどのような役割があるのか、イメージしにくい人もいるかもしれません。本記事では、精神科の看護師の役割や主な仕事内容を詳しく解説します。
精神科の看護師に求められる役割を紹介します。他の診療科で働く看護師と比較して、精神科看護師は患者の心理的ケアや、自立に向けたサポートなどの側面が大きくなっています。言い換えると、精神疾患からの回復を助け、患者のその人らしさを取り戻す手伝いをするのが、精神科の看護師の役割です。
ここでは、精神科看護についてや、精神科で働く看護師の役割を解説します。
そもそも精神科看護とは、さまざまな精神疾患や障害を抱えた人を対象として、精神的な健康を保つための援助をする仕事を指します。日本精神科看護協会は、精神科看護について以下のように定義しています。
“精神科看護とは、
精神的健康について援助を必要としている人々に対し、
個人の尊厳と権利擁護を基本理念として、専門的知識と技術を用い、
自律性の回復を通して、その人らしい生活ができるよう支援することである。”
※出典:日本精神科看護協会. 「精神科看護の定義」
つまり精神科看護のゴールは、看護師としての専門的な知識やスキルを用いて、看護がその人らしい生活ができるようにサポートすることです。
うつ病や統合失調症、アルコール依存症などの精神疾患を抱えた人は、自分自身をコントロールし、思考・判断・行動することが難しくなります。患者によってはセルフケアが難しく、身なりや衛生面を清潔に保てなくなる場合もあります。
患者の症状や置かれた状況は千差万別です。精神科の看護師は、患者一人ひとりの個別性に対応し、その人らしさを取り戻すためのケアを提供する必要があります。例えば、日常生活を送ることが難しい人に対しては生活介助を行ったり、復職や社会復帰を目指す人には、精神保健福祉士(精神科ソーシャルワーカー)と連携しながら自立支援を行ったりする場合もあります。
精神科の看護師の主な仕事内容は、大きく分けて6つあります。
・精神科医の診療を補助する
・コミュニケーションを通じて心のケアを提供する
・患者の状態を観察し、評価(アセスメント)する
・患者のセルフケアを介助する
・患者の服薬管理をする
・社会復帰に向けた自立支援をする
精神科看護師の1つ目の仕事は、精神科医の診療補助です。厚生労働省によると、精神科医とは、厚生労働省が認定した国家資格である医師資格を持ち、精神疾患や精神障害、神経症、心身症などの診断と治療を専門的に行う人を指します(※)。
※参考:e-ヘルスネット. 「精神科医」
精神科看護師は、精神科医のすぐそばで、薬物療法や認知行動療法、精神療法などのサポートをします。ただし、他の診療科の看護師と比べて、精神科看護師の診療補助業務はそれほど多くありません。患者の健康管理(バイタルチェック)や採血、点滴など、看護師としての基本的な仕事の割合が大きく、医学的な処置はあまり行わないのが精神科看護師の特徴です。
2つ目に、精神科看護師は患者とのコミュニケーションを通じて心のケアをすることも大切な仕事です。先述しましたが、精神科看護は精神的な援助を必要としている人に対して、その人らしさを取り戻す手伝いをします。
患者のその人らしさを取り戻すために重要なのが、精神科の看護師によるコミュニケーションです。精神症状が悪化した患者の中には、薬物療法に不信感を覚え、投薬を拒否する人もいます。精神科の看護師は、患者とのコミュニケーションを通じて信頼関係を築き、治療の抵抗感をなくす大切な役割があります。
また、心の病気の原因の1つとされているのが、社会生活で直面するストレスです。患者とのコミュニケーションには、さまざまな精神疾患の原因となるストレスを緩和させ、回復を早める効果もあります。精神科看護師を目指す人は、患者と上手にコミュニケーションを取る術を学ぶことが大切です。
3つ目は、患者の状態を観察し、評価(アセスメント)することです。患者の精神症状によっては、医学的な検査結果のみからでは読み取りにくい変化もあります。そのため、精神科の看護師には、患者の状態を自分の目で観察し、個別性をふまえながら評価(アセスメント)する役割が求められます。
精神科で働く場合は、日常的なコミュニケーションを通じて、患者の態度やしぐさ、言葉遣い、身なりなどから症状に変化がないかを判断するスキルが必要です。
精神科の患者の中には、自身の今の状態を自分の言葉で説明できない人もいます。今日は声のトーンが違う、普段よりも態度がよそよそしいなど、患者の変化を敏感に察し、ケアの仕方を変えることが大切です。
4つ目は、患者のセルフケアを介助することです。精神疾患によって、食事や排せつ、入浴など、身の回りのセルフケアが難しくなる場合があります。患者のセルフケアを介助するのも、精神科看護師の役割です。
精神科病棟の場合は、看護師をサポートする看護助手や准看護師が、セルフケアの介助を担当する場合がほとんどです。しかし、利用者の自宅を訪問し、看護ケアを提供する精神科訪問看護では、セルフケアの介助が重要な仕事の役割に含まれます。身の回りが不衛生だと、精神症状の悪化につながるリスクがあるため、利用者が快適に過ごせる生活環境づくりに取り組みましょう。
5つ目は、患者の服薬管理をすることです。患者の症状にもよりますが、精神疾患の治療は薬物療法がメインです。しかし、精神科の患者の中には、自分が病気である自覚がなかったり、被害妄想などの症状によって薬の服用を拒否したりする人が少なくありません。
精神科の看護師には、患者が適切な量の治療薬を適切なタイミングで服用するよう、服薬管理をする役割があります。薬物療法をスムーズに進めるには、患者と信頼関係を築くコミュニケーションスキルも欠かせません。
6つ目は、精神科の看護師は主治医や精神保健福祉士(精神科ソーシャルワーカー)と連携し、社会復帰に向けた患者の自立支援も担当します。自立支援には、外出が難しい人をサポートする外出支援、地域社会で暮らしていくための社会復帰支援、仕事に就いたり復職したりするための就労支援などの種類があります。
精神科の看護師は、単なる治療だけでなく、患者がその人らしさを取り戻し、幸福な社会生活を送るための手助けをするやりがいのある仕事です。
精神科の看護師は、精神科医の診療を補助し、うつ病や統合失調症、アルコール依存症などの精神疾患からの回復をサポートする仕事です。他の診療科の看護師と比べて、患者とのコミュニケーションや心理的ケアの提供の重要性が高くなっています。
精神科看護師として働く人には、患者のその人らしさを認め、適度な距離感を保ちつつ、絆を強めていくことが求められます。精神科看護に興味がある人におすすめなのが、「訪問看護ステーションALWAYS」です。
訪問看護ステーションALWAYSは、平成31年1月から発足した精神科に特化した訪問看護ステーションです。ご興味がある方は是非ご応募ください。